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摂食障害(拒食症・過食症)治療における患者さんの3つの心(1)人は皆、ダイヤモンドの心を持っている



摂食障害(拒食症・過食症)のみならず、心の病の治療において、
いや、人がこの人生を生きるにあたって、
人間の心をどのように見るかは非常に大事なことではないかと思います。

かつて、「3年B組金八先生」というテレビドラマで、
「人間は腐ったミカンなんかじゃない」という言葉が流行しました
「最初からダメな人間なんていない」ということですが、
人と関わっていく中で、これは非常に大事な考え方だと思います。

いや、人に心の病から立ち上がってもらい、
幸せになってもらうには、
さらにもっと推し進めた人間を肯定する考え方こそが
重要ではないかと思うのです。

私が人と接するにおいて、強く心に言い聞かせているのは、
「人は誰でも生まれながらにして『ダイヤモンドの心』を持っている」
という考え方です。

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摂食障害(拒食症・過食症)治療における患者さんの3つの心(2)ダイヤモンドの心こそ、その人の本質、「本当の自分」である。




ダイヤモンドとは、とても強く、美しい輝きを持っていて、
存在するだけでその価値を感じさせるものですが、
人間もダイヤモンドのように強く、美しく、
存在しているだけで価値のあるというのが本来の姿だと思うのです。

ダイヤモンドの心とは、例えて言うなら、
明るく、穏やかに、素直に、優しく、智慧を持ち、勇気を持ち、
人を信じて生きていきたいというような心であります。

それは人間が生まれながらにして持っている心であり、
それこそが人間の本質だと思うのです。

ときに困難を極める摂食障害(拒食症・過食症)の方たちの治療において、
その治癒を可能ならしめるのは、この強い肯定感にあります。
その人がどのような状態にあろうとも、その本質はダイヤモンドの心にあり、
その心がその人の「本当の自分」であると信じるときに、
行き詰った治療に光が見えてくる可能性が広がってきます。

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摂食障害(拒食症・過食症)治療における患者さんの3つの心(3)「本当の自分」に対する「偽りの自分」



一方、そのような「本当の自分」に対して、
人は様々な対人関係の中で育ち、成長していく過程で、
「偽りの自分」というものが芽生えてきます。

対人関係の葛藤の中で、多くの人は傷つき、失望します。
すると、不安、抑うつ、劣等感、自己嫌悪、自己卑下、恐怖、疑い、怒り、
憎悪などの心が芽生えてきます。

これらの心は、「本当の自分」の心とは正反対のものであり、
その人にとって本当はそうありたくないものです。
誰にでもこうした「偽りの自分」というものがありますが、

この「偽りの自分」の部分が大きくなり、
「本当の自分」の心を圧倒するようになってくると、
その「偽りの自分」から心の病が発症します。

ときには身体的な病気として発症することもあるでしょう。

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摂食障害(拒食症・過食症)治療における患者さんの3つの心(4)もう一つの心、「病気の自分」



さて、摂食障害(拒食症・過食症)では
その上に「病気の自分」というものが生まれてきます。
それは病的な痩せに伴い、まるで何かが乗り移ったかのではないか
と思うほどに病的な思考に囚われた心です。

例えば、その身体が骸骨を思わせるほど痩せていても
「私は他の誰よりも太っている」と感じます。

ある患者さんは、まるでアフリカの難民の子供たちのような
浮き上がった鎖骨や肋骨を見せながら
「この骨のラインが美しいでしょ」と言います。

一口二口の食べ物を口にし、体重がわずか100g増えただけでも、
「このままずっと体重が増え続ける気がする」と言います。

一方、20kg台の体重になり、
これ以上減るといつ死ぬかわからないといった状態になっても、
1kg、2kgと体重を減らし、本人はホッとしています。

「このまま食べなければ死ぬかもしれない」と話しても全く聞き入れず、
ときには「実はそうして太らせようとしているのではないか」
と疑いの心を持ちます。

強制的な治療を試みようとしても、隠れて食べ物を捨てたり、
何百回、何千回というような腹筋、背筋、縄跳びなどを繰り返して
カロリーを消耗しようとしたりします。

その病的な思考は恐ろしいほどに本人の心を支配し、
病的な行動をとらせ、永遠に終わることのない摂食障害の世界に引きずり込み、
ときには死をもたらすのです。

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摂食障害(拒食症・過食症)治療における患者さんの3つの心(5)患者さんの心の中には 「本当の自分」「偽りの自分」「病気の自分」という3つの自分がある



このように摂食障害の患者さんの心の中には
「本当の自分」「偽りの自分」「病気の自分」という3つの自分があります。

摂食障害(拒食症・過食症)の治療を成功させるには、
患者さんの心を知ることが必要です。
・ ・・ほんと必要です。その人の症状だけを見て、
その心を理解せずに治療しようとしても決して成功しません・・・そして、
その心を知るには、この3つの心があるということを知ることが
最も大事なポイントです。

低体重をきたし、重症と思われる摂食障害の患者さんと接すると、
よくこんなことがあります。

治療者が「じゃあ、今日からきちんと食べて頑張ってね」と言うと、
本人はにこやかな笑みを浮かべて、「はい、わかりました」と答えます。
それからはご飯を食べるようになる。けれども、体重が増えない。
「おかしいな?」と思っていると、ある日、密かにご飯を捨てていたのがわかる。

このとき、摂食障害の患者さんの心を知らないと、
「診察ではちゃんと返事をしていたのに、騙された!」「裏切られた!」
と思います。

そして、ただでさえ自己評価の低さが
その発症の大きな要因となっている本人に対して、
「どうして嘘をついたんだ。どうして隠れてそんなことをしたんだ!」
といったような言葉を発して責め、より一層自己評価を低めて、
追い詰めていくような関わりを持ってしまうことがあります。

そのようなとき、患者さんの心に「本当の自分」の心と
「病気の自分」の心があると知っていると、
「『きちんと頑張って食べよう』と思ったのは
「本当の自分」の気持ちなんだろう。
けれども、それだけではなく、
『それを全部食べてしまうとどんどん太ってしまうぞ。
だから、何とか食べないようにしないと』という
「病気の自分」の気持ちもあるはずだ」とわかります。

さらに、その両方の気持ちを比べてみると、
「病気の自分」の心は「本当の自分」の心を圧倒しています。
ですから、「『病気の自分』はその本人の行動を支配して、
何とかして治療者らを欺き、病的な行動を実現しようとするだろう」
ということもわかります。

この「本当の自分」と「病気の自分」という心の原理を理解していれば、
患者さんに病的な行動をとられても、決して騙されたとは思いません。
もし、そのような病的な行動をとられたとしても、
それは予見されていることですから動揺もしません。

むしろ、そのような病的な行動を発見されたときに
本人が抱く自己嫌悪感をどのように拭い去り、
どのように安心感を与えていくかというような治療的な関わりを考え、
実践することが出来ます。

さらにこうしたこともできるでしょう。
それは、本人が「頑張ります」と言ったときに、
「けれど、本当にできる?本当は難しいでしょう?」と
もう一歩踏み込んだ問いかけをすることです。

それによって、あらかじめ病的な行動を防ぎ、
「この人は私の心を理解してくれているんだ」という安心感を与えることも
可能になります。

このように3つの自分うち、2つの自分を知っているだけでも
その治療は大きく変わってきます。

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摂食障害(拒食症・過食症)治療における患者さんの3つの心(6)3つの心を理解することで、治療の関わり方が分かる



では、摂食障害(拒食症・過食症)において、
この3つの自分をどのように捉え、
治療に生かしていけばよいのでしょうか。

先程の例に挙げましたように、
標準体重の70%を割るくらいの低体重の状態の患者さんの心を理解するには、
概ね「本当の自分」と「病気の自分」のこの二つの心と
その葛藤を意識しておけば、どのように関わり、
治療を進めていけばよいかがわかります。

一方、体重が徐々に回復してくるときにその患者さんをよく見ていると、
その心の中に「偽りの自分」の心の問題があるのが見えてきます。

明らかに「病気の自分」による病的な思考とは違った心の問題です。
これは見ようとしない人には見えません。
病気の症状だけを見るのではなく、その人のパーソナリティの問題も
併せて捉える目を持って、初めて見えてくるものです。

体重は増えてきたけれども表情は冴えず何かすっきりしない、
すぐに再発を起こすといった場合は、
この「偽りの自分」の心の問題が残っているためであります。
「偽りの自分」の心が摂食障害発症の温床となっているのです。

例えば、自分を否定しがちな人は、いつも他人の目を気にして、
他人から否定されるのを恐れます。
本当はそうありたくない「偽りの自分」です。

そのような人は、しばしば「いい子」を演ずることで自己防衛します。
本当の自分の思いを抑え込んでしまい、ストレスを溜め込み、
そのストレスを抱え込みきれなくなると、病気などを発症します。

この場合まず、「こんなことを言えば、相手に嫌われるんじゃないかな」と思い、
本当の自分の思いを正直に語れないことが「偽りの自分」であること、
ストレスを溜め込む原因であることを気付いてもらうことです。
その上で「正直に自分の思いを語る」ということを課題として提示します。

ただ実際にいざ話す場面になると、
いくら課題だと言われようとも、なかなか自分の都合の悪いことは
正直に語れないものです。そんなときには、もっと具体的に、
「診察のときには必ず、自分にとって都合の悪いことから話すように」
と課題を与えます。

正直に語れたときには、
どのような問題となるような内容であったとしても、
まずは受け入れることです。

もちろん、その内容が肯定できないものであれば、
「確かにそれはあかんなあ」と正直に伝えることです。
けれども、それでその人を否定するのではなく、
「でも、今日はちゃんと話せたね。それだけで十二分にOKやな」
と大いに褒めるのです。

正直にダメなものはダメと言ってもらいながら、
ダメな部分も含めてどのような自分でも受け入れてくれている
という体験をすると、徐々に「正直に自分の思いを語る」
ということができるようになってきます。


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摂食障害(拒食症・過食症)治療における患者さんの3つの心(7)「本当の自分」の目覚め・摂食障害からの回復



こうして、「偽りの自分」の心の問題が解消され、
そこからくるストレスに脅かされなくなると、その奥に抑え込まれていた
「本当の自分」の思いが目覚めてきます。

患者さんにとっては、病気になる前に最もしんどく感じていた問題を、
治療者に気付いてもらえると、納得できる安心感を得ることが出来ます。
そして、その問題と向き合うように導かれ、その問題が解消されてくると、
その表情は輝いてきます。

「こんなことをしたいなあ」「こんな自分になりたいなあ」
といった思いが出てきて、「そのためには早く病気を治したい」
という積極的な思いが表れてきます。

このように心の内から湧き上がる主体的な思いが出てきて、
行動に移せるようになると、摂食障害(拒食症・過食症)は
自ずと治ってきます。

ただ、ときに本人も気付かないようなところで、
「病気の自分」が病的な行動をとらせようとすることがあります。
ですから、このレベルになってくると、
基本的には本人の主体的な行動を「それでいいよ」と支持しながら、
その一方で、「病気の自分」の行動を注意深く見守り、
もし、そうした病的な行動が見えてきたら指摘してあげることです。
そうすれば、万に一つのずれもなく、摂食障害は回復してきます。

このような過程を経て回復した場合、
ストレスの原因であり、摂食障害発症の温床であった「偽りの自分」の
心の問題に対しても自覚し、解消する方法を身につけているので、
再発の可能性も極めて低くなります。

ここに摂食障害(拒食症・過食症)の真の回復を見ることができるのです。

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摂食障害(拒食症・過食症)治療における患者さんの3つの心(8)本来の姿に戻り、力強い人生を歩む患者さんたち




摂食障害(拒食症・過食症)という病気は、
その心が見えなければ治療が非常に困難な病気であります。
けれども、このようにその3つの心が見えてくると、
病気はその苦しみをもたらす「偽りの自分」の心の傾向性を修正し、
「本当の自分」の人生に目覚めて生きるチャンスでもあります。

私がともに治療をさせていただき、
最後までやり抜いてくれた人たちは、むしろその病気が重症であった人ほど、
鮮やかに力強い人生を歩んでいかれます。

本当の自分を発見したという確信に基づく力強い生き方を見ていると、
本当に素晴らしい人だったんだなあと感じるとともに、
その姿には感動さえ覚え、自分の方が励まされ、学ばされるものがあります。

このような素晴らしい人たちと出会い、
本当の自分に出会うための治療をともにさせていただけたことは、
私にとっても大きな幸せであり、心の財産です。
彼らに出会えたことに心から感謝しています。


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