トップページに戻る

摂食障害(拒食症・過食症)治療における体重測定方法【1】家で体重測定をしない



摂食障害(拒食症・過食症)の治療において、
体重測定の方法は一つの大きなポイントであります。

実際、私が通院で摂食障害の治療に取り組むときに、
一般に最初に課す課題は、

「親に体重計を隠してもらうなどして、家では体重測定をしない。
体重測定は、外来を受診したときにだけ行うように」

とします。

体重の数値は、「病気の自分」の心が最も強く作用し、
患者さんに病的な行動をもたらすものです。
どのような治療的な言葉を投げかけても一瞬のうちに打ち消し、
その心の中を病的な思いで満たすほどの強い力があります。

もし、体重測定を自宅などで続けるならば、
その心は病的な思いでいっぱいになり、
いかなる治療法を提示してもそれを実践することはできなくなり、
延々と病的な行動を続けることになります。

ですから、自宅で体重測定をさせないということは、
治療を行うための前提条件になります。


摂食障害(拒食症・過食症)治療における体重測定方法【2】効果的な測定のタイミング




では、体重測定はいつするとよいのでしょうか。

できれば、診察の前に行うのが理想です。

患者さんは体重の数値を見た後は、
特に体重が回復していればいるほどに

「体重が増えてしまった。どうしよう?」

といった感じで動揺していますから、
その動揺した心を診察で落ち着かせ、
安心感を与えることが大切です。

「病気の自分」に打ち勝ち、
積極的に治療に臨めるだけの心の状態になってもらってから、
日常生活に戻ってもらうことが必要です。

摂食障害(拒食症・過食症)治療における体重測定方法【3】測定頻度:毎日計る弊害



では、実際に体重測定を行うにあたって、
気をつけなければいけないポイントとして、
どのようなものが挙げられるのでしょうか。

まずは体重測定をどれくらいのペースで行うかということです。

患者さんにとって、
その心が「病気の自分」に支配されているときには
しばしば、体重の数値はそのときの自分の人生の全てであります。
一日のうちに何十回と体重を計らなくては
落ち着かないこともあります。

治療場面では、体重を増やさないといけないという気持ちと
体重が増えないでいてほしいという気持ちとの葛藤で、
体重測定の直前には非常な緊張感を持ち、
その前日の夜には眠れなくなることもあります。

ですから、こうした拘りや葛藤の時間を少なくするためにも、
体重測定を毎日行うべきではありません。毎日行うなら、
体重の数値への拘りや体重が増えたときの気持ちの葛藤を
打ち消すことのみに診察が終始するばかりか、
診察のない日にはむしろ「病気の自分」の心を
増大させてしまうことになるでしょう。

また、毎日計っていれば、
本当に肉体が回復している意味での体重増加だけでなく、
便秘であったり、身体のむくみであったり、
こうした見せかけの体重増加もその数値にすぐに反映してきます。

その見せかけの体重増加に対しても不安を増大させ、
「病気の自分」の心を増大させ、
その体重増加が見せかけだと言っても否定しようとするのが
摂食障害の心性です。

ですから、こうした混乱を防ぐ意味でも
毎日の体重測定は避けるのがよいだろうと思われます。

摂食障害(拒食症・過食症)治療における体重測定方法【4】測定頻度:月一回は慢性化の危険・週一回程度が適当




では、今度は逆に体重測定を月に1回くらいまで間隔を空けてみると、
どうだろうかという考え方があります。

これくらい間隔を空けると、
表面的には、患者さんの気持ちは落ち着きます。
体重の数値がもたらす葛藤から心境が解き放たれるからです。

しかし、患者さんのやせへの拘りは変わるわけではなく、
「病気の自分」も何とかやせさせようとするわけです。
すると、この体重測定をしないことをいいことに、
密かに食事を捨てたり、運動をしたりして、
体重を増加させないようにします。

月1回の体重測定ですから、
そのときに増えてなかったとしても何か言い訳をして、
ごまかしやすいのです。

結局、この月1回のペースでの体重測定は、
摂食障害の回復を遅らせ、慢性化させてしまう可能性があり、
あまりおすすめできません。

そこで、どれくらいの間隔での体重測定が適当かといいますと、
週に1回くらいのペースがいいのではないかと思います。

これくらいの間隔であれば、
体重測定の前日から当日にかけては不安が増大しますが、
治療的な関わりがうまくいっていれば、
それ以外の日は概ね落ち着いて過ごせます。

摂食障害(拒食症・過食症)治療における体重測定方法【5】誤差への対処と測定結果の評価方法




ただこのときに気をつけないといけないのは、
体重測定における誤差についての対処と
体重測定の評価方法です。

まず、1回の体重測定で、あまりに細かなところまで拘ると、
その誤差に翻弄されます。

具体的に言いますと、その直前に小便をしたか否か、
飲み物を飲んだか否かといったようなことで、
数百グラムの体重の増減は、すぐに見られます。

そうした事実に目を向けますと、
500g以内の体重の増減は誤差と判断し、
毎週単位での体重測定では現状維持とみなすのが
妥当ではないかと思うのです。

もちろん人によっては毎週300gずつ増えて
体重が増加してかれるような方もおられますが、
そうした場合は5週くらい続けて同じペースで増え続けた時点で、
「普通であれば500g以内の体重の増減は誤差と判断されるが、
あなたの場合、増えたり減ったりというパターンではなく、
5週にわたってずっと増え続けているので、
増加したと判断してもよいでしょう」
と伝えればよいかと思います。

大きく見て治療的には、
治療者も患者も小さな体重変化に翻弄されずにすむといった視点から、
500g以内の体重の増減は誤差とする見方が有効かと思われます。

よって、体重の回復が順調であるか、
あるいは体重の減少が著明であるか、その基準は、
週に500g以上の体重の増減があるか否かで判断します。

摂食障害(拒食症・過食症)治療における体重測定方法【6】500g以上の体重の増加のみ有意な回復とみなす




このように、週に500g以上の体重の増加のみを有意な回復と認めるので、
治療ではこれをノルマとします。

このノルマをクリアーできていれば、
体の回復に必要なカロリーを摂取できているとして良しとし、
そのノルマをクリアーできていないときには、
例え食事を摂っていても、
体の回復に必要なカロリーには足りていないと判断し、
食事量を増やすなどの対応をとります。

ただ、なかには、一日の食事のカロリーを2200kcalまで増やしても、
体重が増加しない患者さんがいます。
この場合、私のこれまでの経験からは、次のようなことが考えられます。

まず考えられるのは、食事を捨てたり、
激しい運動をしたりするなどの問題行動を密かに行っている可能性です。
そのやり方は非常に巧妙なことも多く、なかなかわかりませんが、
こうした可能性があることを念頭においておく必要があります。

それ以外には、稀ではありますが、心の葛藤を抱え、
精神エネルギーの消耗が激しいためということもあるようです。

このように体重測定の評価方法については、
週に500g以上の体重の増減で判断するということがひとつのポイントです。

摂食障害(拒食症・過食症)治療における体重測定方法【7】3週間の平均値で判断



しかし、もう一つ重要なポイントがあります。

それは、週に1回の体重測定だけで判断するのではなく、
3週間の平均値を見て判断するという考え方であります。

これは、体重の誤差のところで述べたことと
ほぼ同様な理由によるものですが、
週に1回の体重測定だけで判断しようとすると、
例えば、何日か便秘が続いているときに体重測定をすると、
体重が増えたように見えてしまい、判断を誤ることがあります。

また、1回だけで判断し、行動制限療法に見られるような
体重によって行動範囲を変えるという条件などを提示していると、
患者さんはしばしば、その直前に大量の水を飲むなどして、
体重が増えたように見せかけようとします。

体重が増えたように見せかけるために
“もの”などを隠し持つなどの行為は、
下着で体重測定するといった方法で防ぐことができますが、
お腹の中まではフォローできません。

しかし、評価方法を3週間の平均値でとるようにすれば、
これらの誤差はかなり解消されます。
例え、便秘のために一時的な体重増加があっても
3週間続けて排便がないということは殆どありません。

ある週に便秘で増加した体重は、大抵は次の週に減少し、
平均すればそれらの誤差は解消されます。
また、患者さんが大量に水を飲むなどして増やした体重も、
ある週に500ml飲んで500g増えたように見せかけたとすれば、
次の週は500mlの上にさらに500ml飲まなくては
体重が増えたように見せかけられません。

さらに次の週になれば、
500+500+500mlで1.5l飲まなくてはなりません。
一部には、そんなことをする人もいるかもしれませんが、
こうした努力にも限界があります。

多くの場合、こちらが3週間平均で判断すると言い、
こうした原理を説明すると、
このような無駄な努力をするのを諦めます。

治療者が1回の体重測定に拘り、
行動範囲を変えるような枠組みの変更をするために、
患者さんもその1回の体重測定に拘り、
いかにごまかすかといったことに目を向けるのです。

摂食障害(拒食症・過食症)治療における体重測定方法【8】急激な体重増加の際の考え方




その他、体重測定の評価に関してのポイントとして挙げられるのは、
急激な体重増加に対する考え方です。
私のこれまでの治療経験からは、
普通に食事を摂取して回復する体重の上限は約1.3kgです。

これを上回る体重増加が見られるときには、二つの可能性が考えられます。

ひとつは3食の食事以外に何かを食べている過食の可能性です。
もうひとつは、急激に栄養分が補給されたことによって生じる
身体のむくみの可能性です。

週に5kg以上増加するようなこともありますが、
これらはむくみによる見かけ上の一時的な体重増加ですので、
多くの場合、数週間のうちにはむくみはなくなって体重が減少し、
3週間の平均値で判断しますと、
やはり1.3kg以内の体重増加にとどまることが殆どです。

よって、こうした場合でも、
週ごとに体重によって行動範囲を変えるようなことを決めていると、
実質の身体的な回復とは無関係なところで、
急激に行動範囲が広まったり、狭まったりして
混乱を招くことになります。

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。